2026年FIFAワールドカップはどう変わる? チーム数、試合数、出場枠など変更点を解説

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Italy team raise 2006 World Cup trophy
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国際サッカー連盟(FIFA)は米国、カナダ、そしてメキシコで開催される2026年ワールドカップの出場チーム数が48に拡大されることを正式に発表した。

従来の32チーム制は2022年に行われるカタール大会が最後となり、その後は新しい48チーム制に変更される。

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FIFAがワールドカップの開催方式を変更するのはこれが初めてのことではない。この巨大イベントの価値と人気を高めるための試みは過去に何回も行われてきた。ワールドカップの世界的な知名度と人気上昇に後押しされ、FIFAはより多くの国を出場させ、さらに世界的な注目度を高める方向を目指している。試合数の追加は放映権及び広告収入の増大に直結するためだ。

チーム数が拡大する2026年ワールドカップの開催方式を詳しく解説し、さらにこの変更が競技にもたらすと思われる好影響と悪影響についても述べてみる。

出場チーム数変更も1チームの最大試合数は変わらず

2017年1月10日、FIFAは2026年ワールドカップが48チーム制に拡大されることを発表した。

これは従来の形式から16チームが追加されることを意味する。1998年のフランス大会以来、32チーム制で争う大会が4年ごとに開催されてきた。それ以前の1994年大会は24チーム制で行われていた。

チーム数の増大によって、大会合計の試合数も64から80へと増えることになる。しかし、1チームが決勝までに戦う最大の試合数に変更はない。決勝トーナメントの試合数が最大4試合から5試合へと増加する代わりに、グループステージの試合数が3試合から2試合へと削減されるため、合計7試合は変わらない。

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1グループ3チーム、決勝トーナメントは32チームに

FIFAは出場チーム数と合計試合数を増やす一方で、各チームと選手たちへの負担を増やさないための配慮も忘れなかった。この2つの課題を解決するための大会開催方式が慎重に検討された。

2022年ワールドカップは32チーム制での最後の大会になる。1998年大会以来の伝統となった、4チームで構成されるグループが8つに分かれる形式である。そして各グループの上位2チーム、計16チームが最終の決勝トーナメントに進出する。

48チーム制が導入される2026年大会からは、3チームで構成されるグループが16に分かれることになる。そして各グループの上位2チームが、計32チームで争う決勝トーナメントに進出する。

この大会開催方式はいくつかの選択肢のなかから生まれた。FIFAは48チーム制の導入に伴い、ランク上位16チームをシードとして、残りの枠を他32チームで争うプレーオフ形式も検討した。しかし、この案は競技面で不公平であるという理由で見送られた。他にも40チーム制による2つの妥協案も検討されたが、FIFAは48チーム制を採用した。

2026年ワールドカップの出場枠割り当て

2017年5月、FIFAは2026年ワールドカップで出場枠が追加される地区を発表した。

もっとも多くの出場枠が追加される地区はアフリカである。この地区は4枠が新たに保証され、さらに大陸間プレーオフの枠も与えられている。次に追加枠が多いのはアジア地区で、4枠の追加が保証されている。ヨーロッパ地区と北米地区は3枠が追加され、南米地区は2枠、オセアニア地区は1枠が追加される。

下は1998年以来続いた2022年ワールドカップの地区ごとの出場枠と拡大される2026年ワールドカップを比較したものだ。

地区 連盟 2022年 2026年 変更
アジア AFC 4.5 8.5 +4
アフリカ CAF 5 9.5 +4.5
北米 CONCACAF 3.5 6.5 (+0.5)* +3
南米 CONMEBOL 4.5 6.5 +2
オセアニア OFC 0.5 1.5 +1
ヨーロッパ UEFA 13 16 +3

*北米地区(CONCACAF)は 2026年開催国として大陸間プレーオフの枠が与えられる

大陸間プレーオフも4チームから6チームへと拡大される。「.5」と表記されるように、5チームが各地区から選ばれ、さらに開催地区から1つの枠が追加で与えられる。2026年の場合は北米からになる。

大陸間プレーオフに進出する6チームはFIFAランキングによってシード順が決定される。上位2シードのチームが不戦勝で大会出場権を手に入れ、残りの4チームが1つの大会出場枠をかけて戦うことになる。

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米国、カナダ、メキシコに開催国枠は与えられるか

2026年ワールドカップの特徴のひとつは米国、カナダ、そしてメキシコの3か国による共同開催であることだ。この3国はワールドカップの伝統に従い、開催国枠での出場権を与えられるだろう。このことについてFIFAはまだ正式に発表していないが、そもそも自動出場権は開催立候補の公式条件に含まれていたこともあって、そうなる可能性は高い。

現地点では、北米地区が2026年ワールドカップでいくつの出場枠を得ることになるかは不明である。また、3国が自動出場権を得ることによって、残りの出場枠がどのように変化するかもまた不明である。

通常では、開催国の自動出場権はその国が所属する地区の出場枠には含まれない。例えば、2022年大会の開催国はカタールであるが、その自動出場権はアジア地区に与えられる4つの出場枠とは別のものとされている。

しかし、2002日韓ワールドカップの開催国の日本と韓国に与えられた2枠はアジア地区の4出場枠に含まれた。残り2つの出場枠は中国とサウジアラビアが獲得し、アジア3位のイランは大陸間プレーオフに挑み、そこで敗れた。

FIFAワールドカップ開催方式変遷の歴史

ワールドカップの大会開催方式はここしばらく一定していたが、1930年の第1回まで歴史を遡ると、大きな変遷があったことが分かる。

最も馴染みが深い32チーム制は1998年から導入された最近のものに過ぎない。1982年大会から1994年の米国大会までの4回は24チーム制で行われていた。それ以前は16チーム制だった。

開催方式も大きく変わっている。出場枠が16から24に拡大された1982年大会ではグループステージが2回に分かれていた。第1ステージでは4チームで構成される6つのグループに分けられ、そこから12チームが第2ステージに進んだ。第2ステージでは3チームで構成される4つのグループに分けられた。第2ステージを勝ち抜いた4つのチームが決勝トーナメントの準決勝に進出した。

1986年ワールドカップでは出場枠は24チーム制のままであったが、グループステージは1回だけに変更された。4チームで構成される6グループも前回と同じで、しかし各グループの上位2チーム(合計12チーム)と各地区3位のうち勝率上位4チームが16チームからなる決勝トーナメントに進出した。

最も異例だったのは1950年大会である。この大会では決勝戦が行われなかった。グループステージでは16チームが4チームで構成される4グループに分けられ、各グループ1位で通過した4チームが決勝ステージに進出し、総当たり戦で優勝を争ったのだ。

この大会ではウルグアイがブラジルを2-1で破ったグループステージの最終戦が事実上の決勝戦であったと考えられている。

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2026年からの開催方式変更がもたらす好影響と悪影響とは

開催方式を大きく変更するときには、その良し悪しを巡って常に議論が起きることは避けられない。

2026年からの新形式が発表されると、ソーシャルメディアでは多くの反発が巻き起こった。48チーム制への拡大によって、ワールドカップが得るものと失うものを分析してみよう。

チーム数拡大の好影響:ワールドカップよりスリリングな大会に

ワールドカップのチーム数拡大には多くの批判があるが、それでもこの新形式がもたらす好影響はいくつかある。 まず今までワールドカップの大舞台から遠かったチームにより多くのチャンスが回ってくる。それに伴い、普段はあまり見られない世界中の異なった地域からのチーム同士による対決が実現することにもなる。

さらに、これまでの各グループ4チームで構成するグループステージ(各チーム3試合)では強豪チームは失敗をある程度は許容できる余裕があったが、各チームが2試合だけを戦う新形式では失敗を挽回するチャンスは極めて小さくなる。それによって強豪チームが思わぬグループステージ敗退を喫するかもしれない。緊張がより高まり、劇的な瞬間や番狂わせの可能性が大きくなり、世界中を興奮させることになるだろう。

それと同じ文脈で、決勝ステージが16チーム制から32チームに拡大されることは新たな混乱を生み出す。より大きくなった、負けたら終わりの勝ち抜きトーナメントでは、「最強」チームが優勝トロフィーを獲得するとは限らない。優勝候補のチームが敗退する危機感が常にあることで、トーナメントそのものがよりスリリングになる。毎年3月に行われる米国大学バスケットボールのトーナメントが「マーチ・マッドネス」と呼ばれるように、である。

チーム数拡大の悪影響:ワールドカップ予選がまるで親善試合に

新形式に向けられる批判の矛先は大きく分けて2つある。

まず、上で述べたような「混乱」した状況では、必ずしも相応しい実力を持ったチームが優勝するとは限らないことだ。番狂わせはファンを興奮させるかもしれないが、人気チームや選手が大会の早い段階で姿を消してしまう危険も高まる。前評判が高くなかったチームがトーナメントを勝ち上がって、大会は盛り上がるかもしれない。しかし、ファンの多くは世界最高のチーム同士が対戦する決勝戦を見たいと願うのではないだろうか。視聴率はこうした考えによって上下することが多い。FIFAは人気の低い準決勝戦や決勝戦の組み合わせが実現してしまう危険が大きくなることを覚悟しなくてはならなくなる。

次に、FIFAはワールドカップの予選を変えたことに対して最も大きな批判を浴びた。16枠が追加されたことで、出場権を得るための厳しい道のりが易しいものになってしまうからだ。そのため、各地区のトップチームにとっては、出場権をかけた予選での戦いは重要性を失い、まるで国際親善試合のようになっていくだろう。

例えば、新形式によって出場枠が2ないし3増える北米地区では、米国がこれからのワールドカップで出場権を失う可能性はほぼ事実上なくなる。そのことによって、競技面でのダイナミズムが以前とは大きく様変わりしてしまう。

同じように、南米地区ではブラジルとアルゼンチンが今でも他を引き離したトップ2を形成しているが、出場枠が拡大されることによって、両チームの予選にかかるプレッシャーと重要性はますます減ってしまう。

ワールドカップの出場権を獲得することは、それまでの実績や実力にかかわらず、どの国においても偉業と見られてきた。例えば、イタリアがワールドカップ出場権を逃すこと(2018年と2022年で実際に起きた)は現在の形式では十分な可能性がある。同じように、ウェールズやカナダのような国がワールドカップに何十年振りに出場を果たすようなことは、それだけで記念すべき出来事になる。

しかし、出場枠が拡大されることによって、多くの強豪チームはもちろん、中堅程度のチームにとってさえも、出場権がほぼ保証されてしまう。ワールドカップ予選の重要性は極めて小さなものになっていくだろう。

(翻訳:角谷剛)


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著者
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Kyle Bonn is a soccer content producer for The Sporting News.