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ビクター・ウェンバンヤマはオールディフェンシブチーム選出確実か スパーズ新人の守備はNBAトップ10?

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Victor Wembanyama
(Getty Images)

オールディフェンシブチーム入りを果たすのは、NBAで最も難しいことのひとつだ。枠は2チームしかない。選ばれるのは10人だけだ。ファーストチームに選ばれたルーキーはいない。セカンドチーム選手でも、新人では5人だけだ(デイビッド・ロビンソン、カリーム・アブドゥル・ジャバー、ティム・ダンカン、アキーム・オラジュワン、マヌート・ボル)。

サンアントニオ・スパーズの新人ビクター・ウェンバンヤマは、6人目となるべきだ。

普段であれば、ウェンバンヤマはセンターとして極めて激しい競争に臨まなければならなかった。ルディ・ゴベア、バム・アデバヨ、アンソニー・デイビス、ジャレット・アレンといった選手たちは、それぞれ守備で素晴らしいシーズンを過ごしている。

だが、今季の賞はポジションが考慮されない。投票者は好きなだけビッグマンに票を入れられる。

いずれにしても、ウェンバンヤマはおそらく選出されるべきだ。守備でリーグ最高のセンターだったのは、彼かゴベアだろう。ポジションが考慮されないことを考えれば、ウェンバンヤマの選出は確実だ。

なぜビクター・ウェンバンヤマのオールディフェンシブチーム選出は確実?

ウェンバンヤマの守備のスタッツはリーグ最高級

リムプロテクションから見ていこう。ウェンバンヤマは8フィート(約244センチ)のウィングスパンを生かし、リムプロテクションでリーグ最高となっている。1試合平均3.5ブロックは、2位ウォーカー・ケスラーの2.5ブロックに大差をつけてリーグトップだ。8年前のハッサン・ホワイトサイドの平均3.7ブロック以来の数字となる。

ウェンバンヤマの守備が輝くのはブロックだけではない。彼はボールを奪い取るスティールにもその長いリーチを生かしている。平均3.5ブロック&1.3スティール超は、2001-2002シーズンのベン・ウォーレス以来だ。

ブロックとスティールは守備におけるインパクトを示す最も簡単な指標だ。しかし、アドバンスドスタッツでも、ウェンバンヤマはエリート級のディフェンダーと示されている。

ウェンバンヤマのアドバンスドスタッツと順位(出場500分超)
スタッツ バリュー 順位
Defensive EPM +3.4 6位
Defensive LEBRON +2.9 2位
Defensive RAPTOR +3.4 2位*

ウェンバンヤマは年間最優秀守備選手賞の候補としても強力な存在だ。今季はゴベアが受賞するかどうかになると見られるが、ウェンバンヤマは自分の時代も来ると分かっている。

ウェンバンヤマは『BasketNews』で「ことしはルディが受賞する可能性がとても高いと知っている。それにふさわしい」と話した。

「今は彼に受賞してもらおう。その後はもう、彼の番じゃなくなるからね」

ウェンバンヤマは相手の脅威

スタッツだけではなく、ウェンバンヤマは実際に相手のショットに影響を及ぼしているのだろうか。リーグ有数の選手たちによれば、その答えは間違いなく「イエス」だ。

カイリー・アービングは3月にウェンバンヤマにブロックされた際、「彼にはすごくやられるよ。年間最優秀守備選手がやるようなことをやっているんだ」と話した。

「彼はガードのようなタイミングも持つんだ」

今季、フィニッシャーとしてエリート級だったOG・アヌノビーは、シーズン序盤に1on1でウェンバンヤマに挑戦している。その結果は予想どおりだ。

アヌノビーはシンプルに笑い飛ばし、このプレイについて尋ねられた時に「彼は高すぎるよ」と首を振っている。

「あまりにも高すぎる」

対戦相手からボールを奪うに至らず、ショットに持ち込まれたとしても、ウェンバンヤマは相手に多くのミスをさせている。リム付近での対戦相手のショット成功率は、彼が守っていると10.4%も下がるのだ。

ウェンバンヤマがいると相手選手がショットを放つことにちゅうちょしているのは明白だ。

スパーズの守備の問題はウェンバンヤマに責任なし

スタッツ面で、ウェンバンヤマをオールディフェンシブチームに選出しない理由はない。唯一、スパーズのチームとしての出来が例外だ。スパーズの守備はリーグ23位となっている。

ここで大事なのは背景だ。昨季のスパーズはNBA史上ワーストの守備だった。昨年のトレードデッドライン(トレード期限)でチーム最高のディフェンダーだったビッグマンのヤコブ・パートルをトレードしたことで、守備の力はさらに落ちている。

そういった状況の中でも、ウェンバンヤマはほかの選手たちに可能なのと同じような活躍をしてきた。ウェンバンヤマがコートに立っている時のスパーズの守備は12位に入る。彼が不在の時は、リーグ史上ワーストをさらに下回る悪さだ。

1試合平均出場時間が29分間だけなのも、ダグ・マクダーモットやケルドン・ジョンソンといった守備が良くない選手をカバーしなければならなかったのも、ウェンバンヤマのせいではない。彼がいなければ、スパーズは簡単に再びリーグ史上ワーストの守備となっていただろう。

スタッツ面からも、映像を見ても、ウェンバンヤマはやすやすとトップ10のディフェンダーだった。シーズンが終わる時に表彰されるべきだ。

原文:Victor Wembanyama should be an All-Defensive Team lock: Why Spurs rookie is already a top 10 defender in NBA(抄訳)
翻訳:坂東実藍

著者
Stephen Noh Photo

Stephen Noh is an NBA writer for The Sporting News.

坂東実藍 Miran Bando Photo

フリーランスライター。NBAや欧州サッカーを中心に担当。