NBA

ニックス移籍後に貢献のOG・アヌノビーは東地区最大のXファクター?

Author Photo Author Photo
O.G. Anunoby
(Getty Images)

12月30日(日本時間31日)にニューヨーク・ニックスにトレードされて以降、OG・アヌノビーはNBAで最も貴重な選手のひとりとなっている。アヌノビーがコートに立っている時のニックスは、100ポゼッションあたり25.1点を上回っているのだ。これは平均出場25分間超の選手の中でリーグ最高の数字である。

アヌノビーがいるとニックスが素晴らしく、彼が不在時は月並みになることは、アドバンスドスタッツを見るまでもなく分かる。アヌノビーが出場した試合でニックスは14勝2敗だが、ひじのケガで彼が欠場した直近の試合は8勝10敗という成績だ。

平均15.3得点、4.9リバウンド、1.6アシスト、フィールドゴール成功率51.4%、3ポイントショット成功率38.4%と、アヌノビーは堅実なスタッツだ。だが、ニックスを完全に異なるチームとした理由を理解するには、もっと堀り下げる必要がある。

守備が戻ったOG・アヌノビー

以前のアヌノビーは素晴らしいディフェンダーだった。スティールでリーグトップとなり、オールディフェンシブ・セカンドチームに選ばれ、昨季の年間最優秀守備選手賞の投票で7位だった。今季が始まった時にトロント・ラプターズでそこまでのレベルではなかったが、ニックスに移籍してからアヌノビーの強度は高まっている。

ディフレクションやインターセプトの頻度を示す『BBall-Index』のパスレーンでの守備の指標で、アヌノビーはリーグ3位だ。彼の近くでボールを持っている時は気をつけなければいけない。最も賢いパサーですら、アヌノビーにはターンオーバーを強いられるのだ。

また、アヌノビーはヘルプに関する直感力が素晴らしい。一度に複数の位置をとることができる。再びマークする選手をカバーできる位置を保ちつつ、ヘルプディフェンダーとしてタイミングを見計らって守備をすることにかけては、おそらくリーグ最高の選手だ。ニックスでアヌノビーは平均1.8スティールを記録しており、これは資格があればリーグ3位となる数字だ。

さらに、アヌノビーはボールを持つ選手に対するディフェンダーとして極めて万能だ。アルペレン・シェングンのようにポストで相手を押し込む選手から、アンソニー・エドワーズのように圧倒的な身体能力を誇る選手まで、どんな相手でも止めてきた。ニックスはアヌノビーと一緒に別の万能なウィングを起用し、アドバンテージを譲ることなく、複数のポジションを入れ替われるようにしている。

ボールに対する守備が優れ、さらにヘルプディフェンダーとしてはエリート級と、それぞれを併せ持つのはまれだ。そのアヌノビーの力が、トレード前にリーグ19位だったニックスの守備を同3位へと押し上げたのだ。

ニックスでフィニッシャーとしてエリート級のOG・アヌノビー

アヌノビーには攻撃面でかなり明白な弱点がある。ドリブルして自身や味方のためのプレイをつくろうとすると、うまくいかないことがあるのだ。だがだからこそ、彼はニックスと完璧に合うのである。

ニックスにはボールを持ちたがるクリエイターが複数いる。そのため、アヌノビーの役割がシンプルになるのだ。混乱した守備陣にアタックできる。そして彼はそれを極めてうまくやってみせてきた。

アヌノビーはたいていバスケット付近でボールを受けてイージーなレイアップにいくか、スポットアップからの3Pだが、ニックスではリムでも強烈だ。そしてコーナーからの3P成功率は44.0%を記録している。

このショット力は重要となる。ジェイレン・ブランソンやジュリアス・ランドルに対するディフェンダーを2人にする相手を苦しめるからだ。ニックスはアヌノビーを反対側のコーナーに置き、ダブルチームによってオープンとなった彼にショットを打たせることを好む。

このスペーシングこそ、平均15得点未満の選手ながら、アヌノビーがコートに立つと、ニックスの攻撃が100ポゼッションあたり9.9得点増えている理由だ。

アヌノビーはニックスのベストプレイヤーではない。しかし、周囲の全員の強みをさらに大きなものとさせている。彼がもたらすメリットはすべて、プレイオフでさらに貴重なものとなるはずだ。アヌノビーはイースタン・カンファレンス最大のXファクターとなる可能性がある。

原文:O.G. Anunoby is the Eastern Conference's biggest X-factor: How defensive ace transforms Knicks into contender(抄訳)
翻訳:坂東実藍

著者
Stephen Noh Photo

Stephen Noh is an NBA writer for The Sporting News.

坂東実藍 Miran Bando Photo

フリーランスライター。NBAや欧州サッカーを中心に担当。