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【NBAスタッツ】バスケットボールのオフェンス力を測るオフェンシブレーティングとは

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Jayson Tatum
(NBA Entertainment)

今季のボストン・セルティックスは、オフェンス力を測るために使用されるオフェンシブレーティングというスタッツで、日本時間12月8日の試合を全て消化した時点で119.9を記録している。この数字はNBA史上最高記録だ。今季はリーグ全体を見ても、オフェンス力の高さが際立っており、リーグ平均でのオフェンシブレーティング112.7はこれまでの史上最高値だった2020-21シーズンの112.3を上回っている。

しかし、オフェンシブレーティングと言われてもあまりピンとこない人も多いのではないだろうか。今回はバスケットボールで利用されるアドバンスドスタッツで、まず知っておきたいこのレーティングというスタッツを説明する。

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そもそもオフェンス力を測るのであれば、平均得点で良いのではないかと思う人もいるだろう。平均得点は1試合で何得点獲得できるかなので、高ければ当然たくさん得点しており、オフェンス力があると考えても良いだろう。

問題は他チームと比較する際だ。チームによって試合の運び方は様々だ。どんどん前にパスを出して素早い攻めを展開するチームもいれば、じっくりと運んでハーフコートで時間をかけて攻めるチームもいる。

素早く攻めるチームは単純に攻める回数も多くなり、1試合での得点数が多くなる傾向にある。では、チームとしてシュートはあまり上手くないものの、攻める回数が多いので得点が多いチームと、じっくり攻めるので攻撃回数が少なく得点も少ないが、シュート力やオフェンスの遂行力が高く、効率良く得点をしているチームはどちらがオフェンス力があると言えるだろう?

それを平均得点よりも比較しやすくしようと、数値化されているのが先述したオフェンシブレーティングだ。

ポゼッションとレーティングの関係

まずレーティングを理解するためには、ポゼッションという単語を理解する必要がある。ポゼッションとは、簡単に言えばオフェンスが攻めている状態のことを表す。ポゼッションはチームの得点、相手のリバウンド、又はターンオーバーで迎えることとなる(厳密にはフリースローでの入った外した、リバウンド時にボールが外に出た場合など、細かい例外もあるのだがここでは割愛する)。

NBAではリーグの1試合での平均ポゼッション数は1チーム100ポゼッションだ。そこで、チームのポゼッション数と得点数をもとに、100ポゼッション平均で何得点を記録するかを計算したのがオフェンシブレーティングだ。

例えば、チームAは100ポゼッション使って100得点を記録したとする。この場合のオフェンシブレーティングは当然そのまま100.0だ。一方で、90ポゼッションで100得点を記録したチームBのオフェンシブレーティングは111.1という計算になる。同じ100得点をマークしたチームでも、チームBの方が少ないポゼッション数で同じ得点を稼いでいるので、効率よく攻めているということだ。

効率性を追求した数値であることから、オフェンシブエフィシェンシー(オフェンス効率)と呼ばれることもある。

これをディフェンスに置き換えたものが、ディフェンシブレーティングだ。考え方は同じで、100ポゼッション平均でのチームの失点を数値化したもの。失点がベースなので、低い方が良いものとされている。

そして、オフェンシブレーティングとディフェンシブレーティングの差を算出したものがネットレーティング。100ポゼッション平均での得失点差と考えるとわかりやすいだろう。

要約すると、総得点や総失点では横の比較がしにくいため、リーグ平均の100ポゼッションに合わせて算出されたものがオフェンシブレーティングを筆頭としたレーティングという数値なのだ。

ポインツ・パー・ポゼッション

これはレーティングではないが、同じくポゼッションと得点数を利用して算出するポインツ・パー・ポゼッション(Points Per Possession/PPP)というスタッツもある。総得点をポゼッション数で割った、1ポゼッション平均での得点だ。1回の攻撃での得点期待値と考えるとわかりやすいだろう。

使い方は様々だが、プレイタイプによって見分けたりするとわかりやすい。例えば、ポストアップしているときのPPPは1.1、アイソレーションしているときは0.9といったチームがいたとすれば、そのチームはアイソレーションよりもポストアップを中心に攻めるべきなのではないか、などといったことが見えてくる。

もちろん選手単位でも測ることができるので、どの選手で攻めたときの期待値が高いのか、その選手のどういった攻め方が最も効率が良いのかなどが、数字として分析できるようになる。


アドバンスドスタッツは突き詰めていくと終わりのない世界ではあるが、リーグの全体像やチームの傾向を見るには非常に便利なものでもある。

細かい算出方法や仕組みを全て理解する必要はないが、より比較をしやすくするために算出されている数値であることを認識した上でこういったスタッツを見ると、リーグで起きていることへの解像度がより高まるだろう。

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著者
大西玲央 Reo Onishi Photo

アメリカ・ニュージャージー州生まれ。国際基督教大学卒。NBA Japan / The Sporting Newsのシニアエディター。訳書には『コービー・ブライアント 失う勇気』『レイ・アレン自伝』『デリック・ローズ自伝』「ケビン・ガーネット自伝』『ヤニス 無一文からNBAの頂点へ』。