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NBA 2023-2024シーズン後半戦に突入 八村塁と渡邊雄太の注目ポイント

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Rui Hachimura, Yuta Watanabe
(Getty Images)

NBAオールスター2024が終わり、2月23日(現地22日)からNBA 2023-2024シーズンは後半戦に突入する。

八村塁の所属するロサンゼルス・レイカーズはプレイオフの順位争いを繰り広げており、渡邊雄太はトレード期限直前にフェニックス・サンズからメンフィス・グリズリーズにトレードされ、プレイタイムが増加している状況だ。

ここでは、NBA日本人選手のシーズン後半戦での活躍を見るにあたって注目したいポイントや、それぞれの置かれている状況をまとめる。

まずは両選手のここまでのスタッツを確認しておこう。

八村塁と渡邊雄太の平均スタッツ

八村 平均 渡邊
42 試合 31
13 先発 0
12.0 得点 3.7
3.7 リバウンド 1.5
1.1 アシスト 0.4
0.7 スティール 0.4
0.3 ブロック 0.2
0.7 ターンオーバー 0.5
1.4 ファウル 1.1
24.2 出場時間 13.5
51.5 FG成功率 36.0
40.0 3P成功率 30.1
72.8 FT成功率 66.7

シーズン序盤はレブロン・ジェームズが欠場した試合で代わりに先発出場することの多かった八村だが、2月4日(現地3日)のニューヨーク・ニックス戦以降は、6試合連続での先発出場が続いている。

先発ラインナップは常に模索していたレイカーズだが、現在は八村、レブロン、アンソニー・デイビス、オースティン・リーブス、ディアンジェロ・ラッセルという布陣に落ち着いている。八村が先発ラインナップに投入されてからの6試合は5勝1敗とチームも好調で、ウェスタン・カンファレンス9位まで順位を上げている。

一方の渡邊は、トレード期限にサンズ、グリズリーズ、ブルックリン・ネッツによる三角トレードでグリズリーズに移籍。優勝候補チームでプレイするという状況はなくなってしまったが、主力に多くのケガ人を抱えるグリズリーズに移籍したことでプレイタイムの増加が見込まれる。

実際にグリズリーズに加入してからの2試合では、サンズでのプレイタイム平均13.2分から18.0分まで増加し、フィールドゴール平均試投数は3.3本から7.0本まで倍増している。グリズリーズでの平均5.5得点は、2022-23シーズンにネッツで記録した自己最多の5.6得点とほぼ同等だ。

鍵となるのはどちらも3ポイントショット

ファンの間で、渡邊は3Pシューターというイメージが定着していると思われるが、今季は八村の3Pにも注目だ。昨季の八村の得点のうち、3Pが占めた割合は21.6%だったが、今季はそれが31.0%まで上昇している。成功率も40.0%を記録しており、昨季のプレイオフで見せた活躍が決して偶然ではなかったことを証明している。

3Pが入るようになったことで、彼は先発メンバーの座を獲得したと言っても良いだろう。これまでダービン・ハム・ヘッドコーチはトーリアン・プリンスを多用していた。それはプリンスの3Pとディフェンスを買われてのことだったが、八村が3Pを安定して決められるようになり、ディフェンスでもそのサイズを利用して良い守備ができるようになったことで、守備力を落とさずプリンスの代わりによりオフェンス力のある八村を起用することが可能となっているのだ。

ネッツ時代にケビン・デュラントの横でコナースリーを決め続け、高確率を記録していたことから3Pのイメージが強い渡邊だが、コーチ陣が彼の話をするときに挙げられる長所はプレイの多様性であることが多い。グリズリーズのテイラー・ジェンキンズHCは渡邊のことを「オフェンスでもディフェンスでもスイスアーミーナイフ(十徳ナイフ)のよう」と表現しており、状況に合わせてプレイスタイルを変化させてくれることを賞賛している。

実際渡邊は、グリズリーズでのわずか2試合ですでにシューティングガード、スモールフォワード、パワーフォワードと3つのポジションを任せられている。ネッツ時代にはスモールボールのセンターをやれることも見せており、ケガ人が多く常にラインナップが安定しないグリズリーズにとってはありがたい選手だ。

それによってプレイタイムがバラつくことも出てきそうだが、そこで安定して出場できるようになるために必要なのが3Pショットだろう。渡邊は2024年に入ってから、実はまだ2本しか3Pを決めていない。安定して出場していたシーズン序盤こそ毎試合決めるような活躍を見せていたが、試合終盤に少ししか出ないような流れになってから、一気に調子を崩している。

ここが少しでも向上すれば、その使い勝手から自ずとプレイタイムは増加するはずだ。3Pが決まっていない時に、フェイクからドライブを仕掛けてフィニッシュに行ったり、ボールを持っていないときに合わせて動くなど、入っていなくても効果的なプレイができるのも渡邊の魅力だが、やはり今は1本でも多く3Pを決めることが、彼の今後の器用に大きく関わってくるだろう。

残り20数試合で精一杯のアピールを

2人は置かれている状況が大きく異なる。しかしシーズン後半戦にどれだけアピールできるかが今後に大きく影響することは変わらない。八村は先発の座をキープすることによって、プレイイン・トーナメントやプレイオフにチームが出場できた場合にチームのキーマンとなれる。

グリズリーズのプレイオフ進出の可能性は限りなく低いが、渡邊は増加するプレイタイムでアピールすることが、来期以降のNBAキャリアに大きく影響する。来季はプレイヤーオプションを持っているという安心感はあるが、ミニマム契約ということもあり切りやすい対象であることも現実だ。ここからの試合で戦力として計算できる存在になることで、来季のプレイタイムも確約される。最良のケースとしては、大きな活躍を見せることで、プレイヤーオプションを破棄して完全なフリーエージェントとなり、グリズリーズ又は他チームと複数年契約を結ぶことだ。

残り20数試合、置かれた状況は違いながらもそれぞれのキャリアにとって大きなターニングポイントとなる可能性を秘めている。

著者
大西玲央 Reo Onishi Photo

アメリカ・ニュージャージー州生まれ。国際基督教大学卒。NBA Japan / The Sporting Newsのシニアエディター。訳書には『コービー・ブライアント 失う勇気』『レイ・アレン自伝』『デリック・ローズ自伝』「ケビン・ガーネット自伝』『ヤニス 無一文からNBAの頂点へ』。