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なぜハーデン加入のクリッパーズは調子が悪くなったのか?

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James Harden LA Clippers
Getty Images

ロサンゼルス・クリッパーズはジェームズ・ハーデンがラインナップに加わってから0勝4敗という成績だ。彼らに何が起きているのか。クリッパーズのファンは心配すべきなのか?

ジェームズ・ハーデンをローテーションに組み込むまで、ロサンゼルス・クリッパーズはうまくいっていた。カワイ・レナードとポール・ジョージがようやく一緒に健康となり、リーグ4位のオフェンシブレーティングと同5位のディフェンシブレーティングを記録していたのだ。100ポゼッションあたりのネットレーティング+11.6は、ボストン・セルティックスとフィラデルフィア・76ersに続く3位だった。

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だが、ハーデンがローテーションに加わってからすべてが変わった。以降のクリッパーズは0勝4敗という成績で、攻撃は30位、守備は25位。4試合のネットレーティングはリーグワースト3位だったのだ。

問題のひとつが、ラインナップにハーデンが加わったことなのは確かだ。なぜ、それほど調子を落とすことになったのか。クリッパーズに解決の糸口はあるのだろうか?

なぜジェームズ・ハーデン加入のクリッパーズは調子が悪くなった?

ハーデンは周りに合わせようとしすぎ

レナード、ジョージ、ラッセル・ウェストブルックと、ボールを支配する3人がいるチームに、同じくボールを支配するハーデンのような選手がフィットするのか、懐疑的な見方は少なくなかった。おそらくはそのために、ハーデンはクリッパーズに加入してからプレイを大きく変えたのだ。

近年在籍したチームにおけるハーデンへの最も大きな不満の声は、キャッチ&シュートの3ポイントショットを打たないことだった。ハーデンは素晴らしいシューターだけに、所属してきたスター選手ぞろいのチームで、ボールのないところからの脅威としてもっとうまくフィットしたはずだ。

今季のハーデンはそれを心にとどめているようだ。はるかにキャッチ&シュートの3Pを打っており、そして決めている。

ジェームズ・ハーデンのキャッチ&シュート3P(NBA.com/Stats
シーズン チーム 試投 成功率
2023-24 クリッパーズ 2.3 44.4%
2022-23 76ers 1.8 41.1%
2021-22 ネッツ/76ers 1.0 33.8%

実際、オフボールでのハーデンは非常に良かった。しかし、オンボールで少しひどかったのだ。11月12日(日本時間13日)にメンフィス・グリズリーズ戦で敗れた試合後、タロン・ルー・ヘッドコーチが話したように、ハーデンは極めて消極的なようだった。

ルーHCは『ESPN』のオーム・ヤングミサック記者に「礼儀正しすぎるんだ」と述べている。

「フィットしようとしすぎに思う。私のせいだ。ちょうど昨日、チーム内で話をした。彼はとにかくジェームズ・ハーデンでいなければいけない。ここ2、3年の彼はアシストでリーグをけん引してきた。プレイをつくり、ピック&ロールでは素晴らしい。だから、我々が彼に彼らしくいられるようにしなければいけない」

「彼は誰の気分も悪くしたくないんだ。それは理解できる。PG(ジョージ)、カワイ、ラス(ウェストブルック)がいるから、彼らに敬意を払うためにね。でも、ジェームズに必要なのはジェームズでいることなんだよ。だから、ジェームズらしくいられるように私がしなければならない」

ハーデンがチームメイトたちと馴染んでいないのは、チームがハーフコートオフェンスを実行しようとしている時に明らかだ。プレイのタイミングがとてもバラバラになっている。

十分な練習を重ねてこられなかったことを考えれば、ある程度は想定されたことかもしれない。だが現状、クリッパーズの選手は全員、お互いにやりやすそうにプレイしているように見えないのだ。

スローなジェームズ・ハーデン

チームメイトたちとのフィットに関しては、少し脇に置いてみよう。肉体的にハーデンが昨季のようなまずまずのレベルに達することができるのかという疑問もある。近年、着実に彼の爆発力は低下しているのだ。

ドライブに関しては今季が最悪だ。相手を抜く力がまったくないかのように見える。サンティ・アルダマのような選手をドリブルから抜いていくよりも、大半はフェイダウェイショットランナーに落ち着くのだ。以前はショットの4分の1から3分の1がリム付近からだったが、信じられないことに、今季の彼は3フィート(約0.9メートル)以内からのショット試投が1本もない。

まったく以前のハーデンではないようなのだ。

この変化がずっと続くものなのか、トレーニングキャンプをまったくこなせなかったことの結果なのかは、まだ分からない。ただ、ルーHCは、ハーデンが「もっと良い試合の調子にならなければいけない」と話した。守備に戻るのに苦労したり、相手を抜かせてしまうところから、コンディション不足であることはすぐに明らかになっていた。

しかし、ひどいポゼッションや敗戦にもかかわらず、ハーデンは調子が万全でなくとも、かなり優れたシューターでもある。FG成功率は47.2%で、3P成功率は36.8%だ。フリースローはまだ失敗していない。クリッパーズがうまく生かせる希望はまだ残っているはずだ。

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クリッパーズにはスターティングラインナップの変更が必要

ハーデンとの問題はハーデンだけに関係しているわけではない。クリッパーズはハーデンの周囲にあまりにシューターがいないのだ。イビツァ・ズバッツは非常に堅実な先発センターだが、3Pはキャリアで1本しか決めていない。ウェストブルックは3P成功率32.3%で、相手は彼に好きな時に打たせている。

ウェストブルックとハーデンはともに、周囲に4人のシューターがいる時に最高の仕事をする。オフボールのプレイをせざるを得なかったロサンゼルス・レイカーズ時代に、ウェストブルックは同じ問題を経験した。『PBP Stats』によると、ハーデンをトレードで獲得する前のクリッパーズは、ウェストブルックがコートに立っている時に100ポゼッションあたりで相手を16.2点上回っている。だが、ウェストブルックとハーデンが一緒にコートに立つと、100ポゼッションあたりで相手に21.1点上回られているのだ。

この状況から救うのに、ルーHCにはまだいくつかの手が残されている。ハーデン不在時にクリッパーズがいかにうまくいっていたかを考えれば、試合の調子を取り戻すまでハーデンをシックスマンとするのは、おそらく理にかなっているだろう。もっと時間をかけてチームメイトたちに慣れれば、それも役立つはずだ。

ただ、ここまでのクリッパーズの問題はごまかせるものではない。完全なパニックモードと言うには、4試合は早すぎる。だが、この序盤においては悪い結果となった。

原文:Should Clippers be panicking over James Harden trade results? Why experiment is off to disastrous start(抄訳)
翻訳:坂東実藍

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著者
Stephen Noh Photo

Stephen Noh is an NBA writer for The Sporting News.

坂東実藍 Miran Bando Photo

フリーランスライター。NBAや欧州サッカーを中心に担当。