吉田正尚がオールスターのアメリカン・リーグ代表チームに選出されるべき理由

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Masataka Yoshida
(Getty Images)

大谷翔平が今シーズンここまでも「馬鹿げている」という言葉の定義を変えてしまいそうなパフォーマンスを見せている。この世界的なスーパースターは現在のところ本塁打数でメジャー全体2位(打者として)、そして奪三振数ではメジャー全体3位(投手として)である。

我々メディアは真剣に新しい言葉を作り出さないといけなくなるだろう。

しかし、好調な2023年シーズンを送っている日本人メジャー選手は大谷だけではない。3月に行われたワールド・ベースボール・クラシック(以下、WBC)の日本代表チームにいたメンバーで、来月のシアトルでMLBオールスターに名を連ねるべき選手は大谷の他にもいる。そして、その選手はかつて過小評価されていた。

ボストン・レッドソックスが今オフシーズンに吉田正尚と結んだ5年総額9000万ドル(約126億円)の契約は大方の予測を上回った。吉田は日本プロ野球(NPB)で素晴らしい打撃成績を残していた。7年間のキャリア通算で打率.327、出塁率.419 である。しかし、前評判では長打力は平均的、盗塁は期待できず、守備にも不安があると言われ、平均年額2000万ドル(約28億円)に近い報酬は過剰だとされた。

この契約内容が明らかになったとき、ESPNは次のように報じている。
 

「この契約について、10人の専門家に話を聞いた。彼らは全員が似たような意見だった。この選手に一定の評価はあるものの、レッドソックスはかなりの金額を払い過ぎたと全員が考えていた」

 

その後、吉田はWBCの舞台で実力を証明してみせた。日本代表チームが戦った7試合において、打率.409、本塁打2本、13打点、そして出塁率は驚異的な.531という成績を残したのだ。 大谷は別格として、吉田は日本代表チームで並ぶものがいない最高の打者だった。

しかし、吉田はレッドソックスでのデビュー後しばらくは苦しんだ。最初の13試合での打率は.167、OPSは.560だった。「払い過ぎ」と叫んだ批評家たちは正しかったように見え、ボストン(そして日本)以外の野球ファンからは忘れられた存在にさえなっていた。

そこから吉田は目覚ましい復調を遂げた。16試合連続安打を記録し、そのうち10試合はマルチ安打だった。その期間の吉田は打率.438と打ちまくり、レッドソックスは11勝5敗だった。ミルウォーキーでのこのイニングは忘れがたい。
 

現在はそこまでの好調を維持できていないが、それでも吉田はレッドソックスの上位打線で安定した成績を残している。シーズン序盤のスロースタートからの47試合で、打率.332、出塁率.392、そしてOPSは.909である。シーズン全体では出塁率.374、OPS+ は124である。打率.297はアメリカン・リーグ6位だ。60試合で本塁打7本、15打点、そして34得点を積み上げてきた。

さらに先週、吉田「デビュー後50試合における最多出塁数」という珍しい球団記録も達成した。

 

近代野球以後、レッドソックスのデビュー後50試合における最多出塁数記録:

吉田正尚 – 87 (2023)
ジョニー・ペスキー – 86 (1942)
ウォルト・ドローポ – 86 (1949-50)
アイク・ブーン – 85 (1923-24)
トム・オリバー – 83 (1930)
テッド・ウィリアムズ – 82 (1939)
フレッド・リン – 80 (1974-75)
 

オールスター・ゲームに話題を移そう。

レッドソックスはおそらく複数の選手をオールスターに送り出すことになるだろう。17本塁打を放っているラファエル・デバースは選出されるはずで、吉田はそのデバースより出塁率が73ポイントも高く、OPS+も10ポイント高いからだ。

実際のところ、レッドソックスで規定打数に達している選手のなかで、吉田は打率、出塁率、OPS、OPS+の分野でトップなのだ。三振率10.7%はチームで最高、アメリカン・リーグでもオールスター及びMVP候補のホセ・ラミレスに続く2位だ。

オールスター投票は第1フェーズでトップ6人の外野手を選び、第2フェーズへと移る。6月12日時点で、吉田の得票数は外野手の8番目である。第2フェーズに残るためにはあと2つ順位を上げなくてはいけないが、5位から8位までは非常に僅差で、わずか53,372票差に4人がひしめいている。第2フェーズは6月22日に終了する。

もし吉田がトップ6に入らなかったとしても、現在の好調を維持している限り、オールスターに選出されるだろう。それに相応しい活躍である。

原文: Masataka Yoshida playing like he deserves spot on AL All-Star team
翻訳:角谷剛
 

著者
Ryan Fagan Photo

Ryan Fagan, the national MLB writer for The Sporting News, has been a Baseball Hall of Fame voter since 2016. He also dabbles in college hoops and other sports. And, yeah, he has way too many junk wax baseball cards.