ケイトリン・クラークがスポーティングニュース年間最優秀大学女子バスケ選手に選出

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Caitlin Clark
(Getty Images/SN Illustration)

今年1月6日、ラトガース大とのアウェイゲームに乗り込んだケイトリン・クラーク(アイオワ大)を待っていたのは熱狂的な応援だった。

ラトガーズ大の本拠地、ジャージーマイクス・アリーナはチームカラーのスカーレットとホワイトのコンビネーション以上に、アイオワ大のブラック&ゴールドで彩られていた。確かにこの2年間、中西部から北東部に位置する『ラストベルト』、そして中西部地区に点在するビッグテン・カンファレンス加盟大学のアリーナではこうした光景が当たり前だった。

だが、ラトガーズ大の位置するニュージャージー州ピスカタウェイは、アイオワ大の位置するアイオワ州アイオワシティからは1000マイル(約1600キロ)以上も離れた場所にある。このことだけでも今、アイオワ大の女子バスケがどれだけ注目されているか分かるはずだ。

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「ラトガーズ大戦は本当に楽しかったです」とクラークはスポーティングニュース(TSN)の取材で語った。

「子供たちがたくさん来てくれていましたね。東海岸まで遠征することはそんなに多くないので」

この日、クラークは集まった観衆の期待を裏切らない、スター選手らしいパフォーマンスを見せた。29得点、10アシスト、10リバウンドのトリプルダブルをマークし、103-69の勝利に貢献。今シーズンの名場面集に入るような試合ではなかったかもしれないが、試合後にクラークのサインを求めて列をなした子供たちにとっては思い出に残る試合だったに違いない。

「今もまだ、その思いは忘れてません」とクラークは言う。

「子供の頃、私もいろんな選手に憧れて、たくさんのジャージー、Tシャツを持っていましたから。多くの少年少女にとって自分がそうした存在になっているというのは、本当に特別なことなんです」

このように全ての人を魅了する魅力こそ、ケイトリン・クラークがスポーティングニュース年間最優秀大学女子バスケ選手に選出された多くの理由の一つと言えるだろう。

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クラークの存在は大学女子バスケ界に多くの新しい観客をもたらした。FOXが中継したアイオワ大の今季最終戦、オハイオ州立大との試合は340万人が視聴し、大学女子バスケの試合としては1999年1月10日のコネティカット大vsテネシー大の一戦以来となる視聴者数を記録した。1週間後、94-89で辛勝したネブラスカ大とのビッグテンのチャンピオンシップゲームも同様の視聴者数を記録したが、これは前夜に行われた男子のデューク大vsノースカロライナ大戦に匹敵する数字だった。

現在開催中の女子NCAAトーナメントの最注目選手がクラークだ。183cmの4年生ポイントガードは1試合平均31.9得点、8.9アシストで共に全米トップ、東海岸で行われるアルバニー・リージョナルを経て、ファイナル4進出を狙っている。

この大会中、クラークがさらに記録を更新することは間違いないだろう。

スコアよりもアシスト、そして勝利のために

2024年の女子NCAAトーナメントが始まる時点でのケイトリン・クラークの大学通算得点数は3771点だ。彼女は今季すでに女子選手で言うとワシントン大時代のケルシー ・プラム(3527点/現WNBAラスベガス ・エース)、カンザス大時代のリネット・ウッダード(3649点/元WNBAクリーブランド・ロッカーズほか)、男子選手ではルイジアナ州立大時代のピート・マラビッチ(3667点/元NBAニューオリンズ・ジャズほか)の記録を追い抜いている。

2月15日のミシガン大戦、彼女のトレードマークともいえる『ロゴスリー』(コート中央のロゴ部分からの3ポイントショット)でプラムの記録を更新したとき、クラークはその記録を噛み締めていたようだった。

とはいえ、それは彼女が描く2023-2024年シーズンのゴールではなかった。個人記録はあくまでも、アイオワ大ホークアイズが29勝4敗の好成績でシーズンを終え、2024年の女子NCAAトーナメントの第1シードを勝ち取った過程での副産物に過ぎなかった。

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「『私はこの記録を狙っていた』というものではありません」とクラークは言う。

「常にチームの勝利のためにプレイしているんです。それが自分にとって最高のプレイにつながるんです。ケルシーであれ、ブリトニー・グライナー(WNBAフェニックス・マーキュリー)、ジャッキー・スタイルズ(元WNBAポートランド・ファイアほか)、いくらでも名前が出てきますが、そうしたトップ10に名を連ねる選手たちや、私が憧れていた選手たちと並び称されるなんて、こんな特別なことはありません。決して当然だなんて思っていません」 

Caitlin Clark
(Getty Images)

当然と言えば、クラークのパス能力はある種、当然のように見過ごされている。ハーフコートでの素早いリードからのノールックパス、フルコートでのトランジションでのロングパスは経験の賜物であり、アイオワ大のコーチ、リサ・ブルーダーから学んだものだとクラークは言う。

「コーチ・ブルーダーはいつも私たちに言うんです。『アシストを大事に。アシストはゴールよりもずっと重要なものだ』と。だからポイントガードとしては、味方の選手たちがいいプレイをできるよう、どこにポジショニングさせるか、分かってなくちゃダメなんです」

このトーナメントが始まった時点でのクラークの通算アシスト数は1092本で、オレゴン大時代のサブリナ・ヨネスクー(1091本/WNBAニューヨーク・リバティ)を1本上回っていた。トーナメント中にはゴンザガ大時代のコートニー・ヴァンダースルート(1118本/WNBAニューヨーク・リバティ)に追いつき、フロリダ国際大のアンドレア・ナジ(1165本/元WNBAワシントン・ミスティクス)に次ぐ史上2位の記録を残せるかもしれないい。どんなスポーツであっても伝説になるような選手は状況把握が素晴らしいのは当たり前と思うかもしれないが、これはもっと評価されて然るべき記録だろう。

「ずっと感じていたんですが、私は試合を異なるスピードで見ながら、どこで選手にボールを渡せばいいか把握できるんです」とクラークは言う。

「チームメイトを動かして、みんながスコアする手助けができれば、私にとってもプラスです。誰もが得点数のことばかり口にしますが、個人的にはパスもスコアと同じくらい意味のあるものだと思っています」

そんなクラークにとって、カレッジで達成したい記録はただひとつだ。と言うのも、昨年NCAAトーナメント決勝まで駒を進めながら、ルイジアナ州立大に85-102で敗れているからだ。

ネブラスカ大とのビッグテン・トーナメント決勝戦は、観衆が次に目にするであろう、クラークの目標を思い出させる試合となった。クラークは全34得点のうち30点を後半にマークし、ホークアイズは11点差を追いついた。あの状況に怯んでいた選手はいなかったとクラークは言う。実際、チームメイトたちは次々にクラッチショットを決め、オーバータイムに突入したときには、結果は見えていたようなものだった。

クラークは、この試合が自分にとってのベストゲームの一つだったと言う。クラークが次に何を成し遂げるのか。これだから、今年の女子NCAAトーナメントは見逃すことができない。

「あの状況は、コーチ・ブルーダーが練習でいつも私たちに課しているものなんです」とクラークは語った。

「いつもでも実際のゲームのように、試合終盤のシチュエーションの中で練習しているんです。だから、残り2分でのビハインドが15点でも、2点でも、私たちは追いつけます。どんなことだってできる、それだけの攻撃力が私たちのチームにはあるんです」

※この記事は3月21日に公開されたスポーティングニュース国際版の記事を翻訳し、日本向けに一部編集を加えたものとなります。翻訳・編集: 石山修二(スポーティングニュース日本版)

著者
Bill Bender Photo

Bill Bender is a national college football writer for The Sporting News.

石山修二 Shuji Ishiyama Photo

スポーティングニュース日本版アシスタントエディター